2006年01月22日

ever green

早朝ふと目が覚めると、枕に成がいた。
いつのまにか足元から移動して、枕の半分を占領している。
くふー、くふー、と弱弱しい呼吸だけど、
額越しに熱が伝わってくるけど、
それでも成が生きていることが嬉しくて、しあわせだった。

朝、何も食べたがらない成にプロポリスを混ぜたはちみつを用意。
口の中の上の部分に塗りつけて、栄養を取らせるといいって教えてもらった。
あと、フラックスシードオイルを混ぜたカロリーエース。
やだ〜って顔を背ける成に「栄養取らなくちゃだめだよ」と口を開かせる。
カロリーエースも卵黄もすぐに拭いてあげないと、
口の周りがかぺかぺになっちゃうんだよね。
成の口の周りはところどころタンポポのような黄色。
朝、一緒に眠れた事が嬉しくて、私は上機嫌だった。

「いってくるね!」
それが、生きている成にかけた最後の言葉だった。

昨日もスポーツ用品を取り扱っている数店を偵察したのだけど、
よく見かける酸素スプレーはどこにも置いていない。
出来るだけ最速で家に帰りたいので、
お店の偵察はお昼休みやごはんを食べる前にうろうろ行っていた。
魚屋さんでまたほたても買っておこう。
頼りにしているBBSを覗いたり、酸素について調べているうちに、
妹からメールが届いた。
がくん、と成の容態が悪くなったらしい。
窓を開けて外の空気を吸わせているけど、明日は危ないかも、と。
え?朝はだって、少し良かったような気がしたのに・・・
ムリにごはんを取らせようとしたからだろうか・・・
ものすごい後悔とともに、焦りが湧き上がってくる。
タウンページで酸素スプレーを取り扱っていそうなお店を探して。
でも、どうしよう。
今日は妹がついているからいいけど、明日はどうしよう。
どうしても明日は休めない。
妹もお母さんも休めない。
だからといって成を1匹で置いておくのは・・・置いておけるわけない。
どうしよう。どうにかして休めないだろうか。
極度の焦りと不安で貧血状態を起こしそうになる。

そして迷いの中、15時30分頃、妹から短いメールが届いた。
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成は、八重の元に旅立ってしまった。
まるでみんなが休めない日を避けるように、見計らってくれたように、
私を待つことなく静かに逝ってしまった。

 チャリをかっ飛ばして家路を急ぐ。
でも、ああそうか。もう、急ぐ必要はないんだった。
成は静かに眠っている。
呼んでも目を開かない。
くふー、くふー、って息の音もしない。
やせこけた体を丸くして、静かに眠っていた。
朝までは、おなかに耳をつけるといろんな音が聞こえてきた。
ごはんをほとんど食べなくても、
きゅー・・・くくく・・・くるる・・・って、体が活動する音が聞こえた。
今の成からは何の音もしない。
死ぬって事は、音が消えるってことなんだなぁってぼんやり思った。
何かをブチ壊したい位、後悔と寂しさがこみ上げてくるけど、
同時にもう息苦しい思いや痛い思いをさせる事もないんだと、安心した。
もう苦しくないね。
でも、でもほんとはやっぱり、もっと一緒に生きたかったなぁ。
ごめんね、成。
ありがとう、成。

最期は、くっくっと息が詰まってしまったようだった。
妹がぷぅって息を吹き込んだら、1回は蘇生したらしい。
でもしばらく後、
また同じ発作が起こってしまった時はもう、成は力尽きてしまった。
すごいなぁ。
とっさにそういう事を思いついて出来るなんて、エライよ。
私だったらおたおたおろおろして、閃かなかっただろう。
人間の価値のヒトツは、イザって時に何が出来るか、だよね。
えらかったね。一人で成を看取るの、心細かっただろう。
いつもはクールな妹が泣くのを見て、姉の私はさらに悲しみが増した。

そんな中、私たちは夕食にピザーラのピザを食べた。
泣きながら、笑いながら、
成はよくがんばったねぇ。えらいよねぇ。って。
そばに成を眠らせ、思い出話をしながら、ピザを食べた。
060122.jpg
最後の最後まで、成はよろよろしながら猫トイレまで歩いた。
歩いたら疲れちゃうでしょ、ここでいいんだよ、と言ってもきかず、
ふらふらと猫トイレに片足をいれて、やっと辿り着いたというように。
片足だけしか入っていないから、トイレの外に流れてしまうけど、
そんなの何てコトない。
なんて誇り高くてカッコイイ猫なんだろう。
17日に尽きるはずだった命を、ほたてをたべて5日間延ばしてくれた。
残していく私たちのために、時間を作ってくれた。
なんて優しい猫なんだろう。
今でも、私の心の中には、当時の成が生きている。
何か考え込みそうになった時、ふと先を迷った時、
キレイなえだまめ色の目をした成が、静かに私を振り返る。

私が世の中に浮上するまでに季節が1つ変わった。
三日月 まだリンパ腫を知らなかった頃の最新記事】
ニックネーム りゅう at 23:11| 三日月 まだリンパ腫を知らなかった頃 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする